今回は、久しぶりの観たレポ! えんげき屋さん、劇団シバイヌの宮﨑がレポートを書きます!
[writer] 宮﨑 萌美(みやざき めぐみ):劇団シバイヌ代表、えんげき屋さん。定期的な演劇公演のほか、ワークショップ開催や個人の作品制作などもおこないながら、精力的に活動している。
山口大学演劇サークル劇団笛令和6年度冬公演「むちゅうのドリー」を観劇して
久野さんの作品を観るのはユニット・talystと2回目でしたが、2時間越えの大作とのことで、どんな作品か楽しみでした。
物語はクローン羊ドリーのように、代々無性生殖で女性から女性が生まれるという「ドリー」の血筋をもった女性たちと、その生活を取り巻く人びと、その要素に加えて日本神話が重ねられているというお話。
淡々と進むリズム感と空気感の久野ワールド全開って感じ。全体の淡さや(ある意味甘さでもある)、主人公は往々にしてなるべく核心に触れないようにぐるぐると回っているような性格。傍らの人々も詩的なセリフだったりするので、単純なストーリーを追うという感じではなく、ずっと揉まれているようなざわざわ感があり、そういった点は好みが分かれそうです。
「生」をテーマとして取り扱うなか、ずーーーーっと「死」をほのめかしている。これはリードの女性(大きくなったドリー)の役のやり口・演出のやり口だと思いたいですが、ずっとざわざわさせてくる。とにかく暗い(笑)、嫌いじゃない。
だからこそ、登場人物たちが「死」に直面する瞬間や「死」を切望したり、「死なせたい」と求める心が描かれる部分で、もっと観客側を刺してきてもいいんではないかと、終始揉まれながら(笑)思った。
人間だからこそ「生きたい」の裏側には「死にたい」という心がある、それは誰のなかにもある。それを直接的に表出するシーンだからこそ、”はっ!”とさせて欲しい。問題意識の見える作品だったからこそ、今舞台上に内向きになってしまっている矢印を、もっと、観客に向けて投げてもいい。
最近あたまをぐるぐるさせてくれる作品を見ていなかったので、(お話はハートウォーミングでは決してないのですが)とてもほかほかした気持ちになりました。
上回生がサークルを卒業する時期にもなっているそうなので、また今後の笛さんがどんな作品をやっていくのかも気になります。
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